組合の種類と主な事業

 中小企業の組合は、それぞれ法律によって設立されており、いくつかの種類がありますが、その主なものは次のとおりです。

 中小企業の経営の近代化・合理化等を図るため最も利用され普及している「事業協同組合」、参加中小企業の事業を統合する「企業組合」及び「協業組合」、業界全体の改善向上を図る「商工組合」、商店街の商業者等で組織する「商店街振興組合」、飲食業、旅館業、クリーニング業などの環境衛生業種で組織する「環境衛生同業組合」等があります。
 これらの組合は、設立目的に応じて自由に選ぶことができますし、また、加入資格があれば既存の組合に加入することもできます。

◆事業協同組合

 中小企業者が相互扶助の精神に基づいて共同で事業を行い、経営の近代化・合理化と経済的地位の改善向上を図るための組合で、事業は組合員の企業を支援・助成するための事業ならほとんどすべての分野で実施できます。組合の設立も4人以上集まればよく、気心の合う同じニーズを持った事業者だけで比較的自由に設立できますので、中小企業者にとって非常に利用しやすい組合として広く普及しており、最も代表的な組合です。
また、この組合は、従来、同業種の中小企業で組織するケースがほとんどでしたが、 最近は、異なる業種の事業者が連携してこの事業協同組合を組織し、各々の組合員が蓄えた技術、経営のノウハウ等の経営資源を合わせて新技術・新製品開発、新事業分野・新市場開拓等をめざすものが増えつつあり、その活動が注目されています。
事業協同組合が実施する共同事業にはいろいろ種類がありますが、比較的多くの組合が実施しているものは次のような事業です。

▽共同生産・加工事業
 組合が、新鋭設備等を導入し、組合員が必要とするものを生産・加工し、組合員が引き取る事業です。これによって原価の引き下げ、規格の統一、品質の向上、設備の効率化などが図れます。

▽共同購買事業
 組合員が必要な資材等を組合がまとめて購入し、組合員に供給する事業です。これによって、仕入先との交渉力が強化されるので仕入価格の引下げ、代金決済条件などの取引条件の改善、購入品の規格・品質の均一化などが図れます。

▽共同販売事業
 組合員が生産した物を組合がまとめて販売する事業です。これによって販売価格や決済条件が有利になるほか、大口需要先の開拓など販路の拡張が図れます。

▽共同受注事業
 組合が注文を受け、組合員に仕事をさせ、組合が納品する事業です。また、組合員に注文を斡旋する方法もあります。これによって、大口発注先の開拓など販路の拡張や取引条件の改善などが図れます。

▽共同検査事業
 組合員の製品、設備、原材料等について、その品質・性能、仕事の完成状況などを検査する事業です。これによって、品質の維持・改善、規格の統一、仕事内容の評価を高めることができます。

▽市場開拓・販売促進事業
 市場開拓事業は、組合員の製品や取扱商品などの販路の維持拡大を図るために共同で市場調査や展示会を開催する事業です。また、販売促進事業には、広告・宣伝事業、共同売出し事業、クレジット事業などの事業があります。これらの事業は、個々の企業では採算が合わないとか、品揃えができないなどの理由で実施することが困難な面がありますが共同で行うことによって可能になります。

▽研究開発事業
 組合が研究施設を設置したり、公的な試験研究機関等に研究を委託するなどして組合員の事業に関する様々なテーマについて研究開発を行う事業です。これによって、製品・技術・意匠・作業方法・販売方法の改善・開発などが図れます。

▽情報提供事業
 組合員の経営に役立つ需要動向、技術情報、業界情報、経営管理情報等を収集し、組合員に提供する事業です。また、組合の共同事業に役立つ情報の収集や組合をPRするための情報を組合員や関係方面へ提供することも組合の情報化事業として大切な分野です。なお、最近では、コンピュータなど情報機器を導入して情報提供を活発に展開している組合も多くみられます。

▽人材養成事業
 組合員をはじめ、その後継者、組合員企業の管理者などを対象に計画的・体系的に教育研修等を行うことによって人材を養成する事業です。人材養成は、企業経営の基本をなすものですが、特に最近では、情報力、技術力、マーケティング力等のソフトな経営資源の充実を図る必要から、この事業の重要性が一層高まっています。

▽金融事業
 組合員の事業資金の調達を目的とする事業です。組合が金融機関から資金を借り入れ、これを組合員に貸し出す方法と組合員が金融機関から直接借り入れる際に組合が保証する方法があります。組合と組合員のための金融機関として商工中金があります。

▽債務保証事業
 組合員が顧客や仕入先等と取引をする際に組合がその取引の債務を保証する事業です。これによって、組合員の取引の円滑化と拡大を図ることができます。

▽共同労務管理事業
 組合員の従業員の確保・定着あるいは能力の向上などを図るため、組合員が行う労務管理の一部を組合が代わって行う事業です。これによって、労働時間短縮、福利厚生等の労働条件、安全衛生、作業環境等の改善が図られます。また、従業員の知識・技能等の向上を図るための教育・訓練などもさかんに行われています。

▽福利厚生事業
 組合員の私生活面の利益を増進するための事業で、健康診断、慶弔見舞金の給付、親睦旅行、レクリエーション活動などがあります。この事業は、組合員の融和、組合への参加意識、協調性の高揚等に効果があります。

▽経営環境の変化に対応する新たな事業
 これまで述べた事業は、現在協同組合が行っている事業のうち、主な事業とその概要を紹介したものです。 組合の共同事業は、これまでも時代の変化に対応して新しいものが生れています。例えば、地球温暖化、廃棄物、フロン等のエネルギー環境問題への対応事業、都市過密に対応する集団化事業、OA機器を利用した管理システム、デザイン・商品の研究開発、情報化社会への対応、地域産業おこし等の共同事業です。 特に、最近は、それぞれ異なる業種の企業同志が結び付き、互いの技術や経営、マーケティングのノウハウ等を提供し合って新技術・新製品を研究したり、新しい事業分野を開拓する知識融合化及び製造物責任法の施行に対応する製品の安全対策等の事業が注目されております。
また、国際化の進展に伴い、外国人研修生の共同受入れ等の事業も実施されるようになりました。
以上述べた以外にも多くの事業がありますが、事業の成果を高めるには、組合員が個々で実施するよりも組合でまとまって行う方が一層効果的と考えられる事業を実施することがポイントです。

◆事業協同小組合

 組合員になれる資格が、従業員5人以下(商業・サービス業は2人以下)の事業者に限られているのが特色で、それ以外は事業協同組合とほぼ同様です。

◆火災共済協同組合

 中小企業者が、火災等によりその財産に生ずることのある損害を填補することを目的に組織される組合です。実施できる事業は火災共済事業だけに限られ、その設立は事業協同組合と異なり、出資総額、組合員数等に制限が設けられています。

◆信用協同組合

 中小企業者、勤労者及び住民が相互扶助の精神に基づき、協同して預金の預け入れ及び資金の貸付等の信用事業等を行う組合です。

◆協同組合連合会

 協同組合(企業組合を除く)が単独で行うよりも、大きな効果が期待できるような共同事業(例えば共同宣伝・共同購買等)を行って、その会員である協同組合及び組合員の経済的地位の向上を図ることを目的として組織される協同組合の上部団体です。

◆企業組合

 個人事業者や勤労者(4人以上)が組合に事業を統合(個々の資本と労働を組合に提供する)して、組合員は組合の事業に従事し、組合自体が一つの企業体となって事業活動を行う組合です。企業組合は、組合員が共に働くという特色をもっており、そのため組合員に対し組合の事業に従事する義務が課せられております(原則として組合員の3分の2以上が組合の事業に従事しなければなりません。さらに、組合の事業に従事する者の2分の1以上は組合員でなければなりません)。また、組合員は個人に限られますので、会社は加入できませんが、事業者に限らず勤労者なども加入できます。
このようなことから、この組合は、小規模な事業者が、経営規模の適正化を図る場合や安定した自らの働く場を確保する場合などに適しています。
なお、この組合は、事業の実施形態によって次の二つに分けられます。

▽集中型
 その一つは事業所集中型の形態です。これは、組合員がいわゆる合同した形態をとる組合であり、組合員が従来営んでいた事業所を閉鎖して組合の事業所を1力所に集中して、組合自体が事業活動の主体となる組合です。

▽分散型
 もう一つは事業所分散型の形態です。これは、組合員が従来営んでいた事業所を組合の事業所として存続させる形態をとる組合であり、仕入や販売については各事業所に委ねて(各事業所長に権限を与える)、組合本部は、主として各事業所の売上代金の収納管理や仕入代金の支払等の業務を行う組合です。

◆協業組合

 組合員になろうとする中小業者が従来から営んでいた事業の一部又は全部を共同して経営し、事業規模の適正化による生産性の向上を図ろうとする組合です。協業組合は組合員の事業の一部を協業する場合と全部を統合する場合があります。事業協同組合のように組合員の事業の一部の共同化も企業組合のような完全合同もできますが、組合員は必ず事業者でなければならず、組合員の営んでいた事業の一部又は全部の共同経営に限られます。 また、事業協同組合や企業組合と違って、出資額に応じて議決権に差を設けることができますし、加入については総会の特別議決による承諾が必要で加入を制限することができます。出資も組合員1人で出資総口数の50%未満まで持つことができます。協業組合は4人以上の事業者で組織できますが、組合員は原則として中小企業者でなければなりません。
しかし、定款に定めれば組合員総数の4分の1以内で大企業者も加入させることができます。

▽一部協業
 一部協業は、組合員の事業活動の一部分(例えば、生産工程の一部分であるとか原材料の仕入-生産-販売の部門のうち一部門など)を協業する場合や、組合員が取り扱う多くの品種のうち一部分を協業することも可能です。

▽全部協業
 全部協業は、組合員が行っている事業の全部を統合するものですが、組合員が異業種にわたる場合でも全部協業は可能です(例えば、部品加工業者と完成品メーカーによる一貫生産、異業種の小売店による百貨店の形成など)。

◆商工組合

 事業協同組合が共同経済事業を中心として組合員の経営を合理化・近代化することを主な目的としているのに対して、業界全体の改善と発展を図ることを主な目的とする同業者の組合です。したがって、業界を代表する同業組合的性格を持っています。このようなことから、組合の地区は原則として1以上の都道府県を地区とすること、その地区内の同業者の過半数が組合員となるものでなければならないこと等が設立の条件とされています。 また、この組合の組合員は、原則として中小企業者ですが一定の条件のもとに大企業者なども組合員にすることができます。 商工組合が行う事業には、次のようなものがあります。
  • 不況を克服することを目的に、過当競争を排除するための安定事業
  • 経営の合理化を遂行するための合理化事業
  • 組合員の事業に関する指導教育、情報の収集提供、調査研究事業
  • 組合員のためにする組合協約の締結
  • 大企業の進行に対する特殊契約の締結

▽出資商工組合と非出資商工組合
 なお、商工組合には、出資制の組合と非出資制の組合とがあり、出資制の組合にあっては、上記の事業と併せて、事業協同組合と同じように共同生産・加工、共同販売、共同購買等の共同経済事業も行うことができます。

◆商工組合連合会

 会員である商工組合又は商工組合連合会の行う事業の総合的な事業を行うことにより、中小企業者が営む事業の改善発達を図ることを目的に組織される商工組合の上部団体です。

◆商店街振興組合

 小売商業・サービス業を営む事業者等が商店街を中心にして組織するもので、主に街路灯、アーケード、カラー舗装、共同駐車場や文化教室、集会場などのコミュニティ施設を設置するなどの環境整備事業を行って、街づくりを推進しようとする組合です。その他、共同仕入、共同宣伝、共同売出し、チケット・商品券の発行等の販売促進事業や顧客・商品情報管理等の情報化事業などの共同経済事業を行うこともできます。
このように、商店街振興組合は商店街を中心とした街づくりを行うものですから、組合を設立する際には次の条件を満たさなくてはなりません。
  • 小売商業、サービス業を営む事業者30人以上が近接して商店街を形成している地区であること。
  • その地域内で組合員となれる資格をもつ者(定款で定めれば非事業者であってもその地域に居住している者は組合員となれる)の3分の2以上が組合員となり、かつ全組合員の2分の1以上が小売商業又はサービス業を営む事業者であること。

◆環境衛生同業組合

 飲食業、美容、理容、旅館、公衆浴場、クリーニングなど国民生活の環境衛生に特に関係の深い業種の事業者によって組織されるもので、現在17の業種が指定されています。事業としては、適正な衛生管理や衛生施設の改善向上を図るため、営業方法の取り決めや営業施設の配置基準の設定などを行い、また、健全な営業を妨げているゆきすぎた競争をとりのぞくため、行政庁の認可を受けて料金や販売価格の制限などを行うことができます。
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